NISSAN GT-R × HRE PERFORMANCE WHEELS

GT-Rという名の重み

GT-Rという車は日産のスポーツカーの歴史、ひいては日本の車の歴史の中でも特筆すべき存在である。

そのルーツは1969年に登場した日産「スカイラインGT-R」に遡る。

3代目 C10型スカイライン、通称「ハコスカ」にレーシングエンジンを搭載したのが始まりだ。

初代スカイラインGT-Rは、日本のツーリングカーレースで圧倒的な性能を誇りスポーツカーファンから絶大な支持を得た。

その後も、スカイラインGT-Rは多くの進化を遂げ、1990年代には「R32」「R33」「R34」として、世界中の自動車ファンの心を魅了した。

そして、2007年にR35型GT-R(通称35GT-R)はデビューを果たす。これまでの「スカイラインGT-R」から「スカイライン」の名を外し、「日産GT-R」として独立したシリーズとなった。

35GT-Rは、その先進的なテクノロジーと卓越した性能で、世界中のスーパーカーとも肩を並べる存在へと登り詰めたのだ。

車名の由来、山と空が織りなす稜線「スカイライン」を超えた様に。

そんな誰にとっても特別な存在であるGT-R、自分好みにカスタマイズするオーナーも少なくない。

しかしそこには「GT-R」という存在であるが故に「走りのイメージを崩してはならない」という暗黙の了解というべき固定観念が存在すると感じるのは筆者だけではないだろう。

そんな固定観念を、この35GTRのオーナーは打ち破った。

 

他人(ひと)がやらない事を

カスタマイズの方向性で「他人と違う事」、オンリーワンを目指すのは珍しくない。

しかし、言うのは簡単だが実際に行動に移すのは難しい。

他人がソレをやらない理由にもよるからだ。

自己満足でありながら「他者からどう見えるか?」の要素も無視出来ないカスタマイズの世界。

GT-Rという存在なら尚更だ。

答えは「妥協なくやり切る事」にあった。

 

HRE Vintage GT Series 555 GTMという選択

今回この35GT-Rの足元に選んだホイールはHRE Vintage GT Series 555 GTM

2023年に発表となったばかりの新作だ。

特徴はなんと言ってもそのデザインだろう。

80年代前後にレースでのブレーキ冷却の為、盛んに採用された「ターボファン」を彷彿とさせるようなディッシュデザイン、しかしその中央にはメッシュではなく5本スポークがデザインされている。

かなり奇抜なデザインだか、無名なメーカーや安価なホイールを取り扱うメーカーではなく40年以上の歴史があり、常にオーダーメイド鍛造ホイールの先頭を走り続けてきたHREがこのシリーズを作った事に意味がある。

モチーフこそ往年のターボファンホイールだがブレーキの冷却機能もなければ、レーシングホイールのように軽さを極めたシリーズでもない。

そこにあるのは世界トップクラスの品質と精度を誇るメーカーでありながらアメリカらしい自由な発想を持つHREの遊び心だ。

 

数種類あるVintage GT Seriesの中からこの5本スポークデザインを選んだのにも理由がある。

90年代、日産がグループAに投入し、開幕から終了までの4年間、全29戦をすべて優勝するという偉業を成し遂げた伝説の車「カルソニックスカイライン」の足元からインスピレーションを受けている。

実際にはメッシュやディッシュを履いた車両も存在したが、多くの車好きの印象に残っているのは白い5本スポークを履いた車両だろう。

この、一見するとインパクト勝負に見える奇抜な組み合わせだが、実はその裏には緻密に計算され、歴史や存在に敬意を払った選択というのが見えてくる。

 

 

拘りは細部まで

フィニッシュはスタンダードなBrushed Clear。

フィニッシュの自由度が極めて高いHREならオーナーが望むあらゆるフィニッシュに応える事が出来る。

様々なカラーは勿論、金属の質感を透かしたフィニッシュなんていうのも可能だ。

しかし今回はシックなマットブラックボディとデザインが目立つホイールな分、あえて色味は付けない事でバランスが取れている。

無機質な組み合わせが高性能なイメージをより一層引き立てる。

拘りはそれだけではない。

リヤタイヤはピレリのP ZERO355/25ZR21

このサイズにピンと来る人もいるだろう。

そう、このタイヤはランボルギーニ承認タイヤでアヴェンタドール のリヤに向けて作られたタイヤなのだ。

元々あらゆるシーンでパフォーマンスを発揮出来るよう開発された35GT-Rは専用のランフラット(285/35 ZR-20)を履いている。

交換する際も高性能が故に中途半端なタイヤを選ぶ訳にはいかないが、ランボルギーニ承認タイヤであれば申し分ないだろう。

そして285から大幅にサイズアップしているのにも関わらず、それを微塵も感じさせない履きこなしはそう簡単に出来る事ではない。

カスタマイズのパーツも多く存在する35GT-Rならワイドボディにして履かせる事も可能だろう。

しかしそれではこの355というサイズの意味も変わって来てしまう。

 

 

自らのスタイルを貫き通す姿勢

実はこの35GT-R、以前は別のホイールを履いていた。

勿論、現在のこのスタイルに辿り着く経験とスキルを持っている訳だから普通の選択はしていない。

それは鍛造ホイールメーカーADV.1というアメリカのセレブや著名人達が自身の高級車に挙って履かせる超高級ホイールだ。

自由なカスタマイズの国、アメリカでは稀に見かける組み合わせだが日本でGT-Rに履かせたという話は他に聞いた事がない。

フィニッシュは金属の質感が透けるリキッドスモーク

切削技術の高さを誇るように複雑に削り込まれたディスク部はまさにアルミニウムを使った芸術と言ったところだろう。

誰が見ても非の打ち所がないスタイル、しかし今回のスタイルに進む為に履き替える事になった。

その時、その時のスタイルはこの車にとってあくまで通過点でしかないのだ。

それと同時に今回のスタイルが思いつきの大胆なカスタマイズではなく、この車の進化の過程である事が理解できる。

緻密に計算され、積み上げられたカスタマイズは大多数の賛同が得られなかったとしても、感度の高い車好きのを唸らせる物であると改めて感じた。

この35GT-Rの進化はまだまだ止まりそうにない。

 

SNSでもご購読できます。