
まず、この一台が背負う「R」の意味から始めたい。
多くの者はレーシングのRだと思い込む。だが、違う。これはラディカル——“過激”のRだ。アルピーヌ A110の頂点ウルティムに次ぐ、最も鋭利なグレード。その名の通り、余分をすべて削ぎ落とした確信犯的な一台である。
車重はわずか1トンちょい。軽量ボディをミッドシップに組み合わせ、“走る”という一点のためだけに研ぎ澄まされている。R専用のカーボンリップ、ダクトを備えたカーボンボンネット、そしてルーフまでもがカーボン。高い位置から容赦なく肉を削ぎ、低重心へと振り切る。極めつけはリアガラスレス構造——ルームミラーすら持たない。それでいて公道を走れてしまうのだから、“規格外”という言葉すら生ぬるい。
標準でカーボンホイールにミシュラン カップ2、ザックスの脚にアイバッハのバネ。サベルト製6点式ハーネスのフルバケットが待ち構える、まるで戦闘機のようなクルマだ。

——そのA110Rを、あえて“魅せる”方向へ。
今回オーナーが求めたのは、サーキットへ振り切るのではなく、ストリートで際立たせるという選択だった。国内はもちろん、海外を見渡してもA110Rをカスタマイズした例はほとんど存在しない。前例なき一台に、bond shop Nagoyaは真正面から挑んだ。

足元に選ばれたのはHRE。フロントがヴィンテージGTシリーズ「501GTM」、リアがヴィンテージシリーズ「501M」。どちらもグロスホワイトだ。フロント19インチ、リア20インチの前後異径。純正から1インチアップさせつつ、ウルティムが纏う前後異径のセオリーを丁寧になぞっている。

この車、実はリムもコンケーブも“取れない”難物だ。だからこそあえてモノブロックを選び、限られた条件の中で最大限のフェイスを引き出した。うっすらと効いたコンケーブ、前後で統一された繊細なメッシュ——その表情は、まるでレーシングのエアロディスクを纏ったかのよう。パールの効いた白いボディに、白いホイール。狙いはただひとつ、レーシーに、そして美しく。

タイヤは225/35R19。太く欲張るのでも、極端に寝かせるのでもない。スタンスにも走りにも振り切らない、その絶妙な塩梅こそが大人の仕立てだ。

こだわりは、見えない部分にこそ宿る。純正のザックス+アイバッハは、アジャスターを最下限まで落としても下がりきらない。そこでイギリスの専門ショップからA110R用のバネを取り寄せ、車高をさらに引き下げた。狙いの車高まで落とし込んだうえでアライメントを整え、フェンダーとハブ周りを実測してからホイールを発注する——世界に一台だけの個体だからこその、丁寧すぎる手順だ。結果、目を疑うほどのクリアランスでありながら、どこにも干渉しない。リアフェンダーはミリ単位で叩き込み、それでいて飛ばしてもノータッチ。脚が優秀で、余計な動きを一切しない。

インテリアにも手が入る。純正パドルはあまりに小さく、しかもコラムマウント。ならばと大型パドルへ換装し、操作性を一段引き上げた。ボディと同色のトリム、アルカンターラの質感——走りの塊でありながら、指先に触れるすべてが上質だ。

走るために生まれた過激な一台を、美しく乗りこなす。
その矛盾を成立させたのは、オーナーの美意識と、それに本気で応えたbond shop Nagoyaの情熱に他ならない。


































